功名が辻(1)司馬遼太郎
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天下にむかってはなばなしく起ち上った織田信長の家中に、ぼろぼろ伊右衛門とよばれる、うだつの上らない武士がいた。その彼に、賢くて美しい嫁がくるという…伊右衛門は妻千代の励ましを受けて、功名をめざして駈けてゆく。戦国時代、夫婦が手をとりあってついには土佐一国の大名の地位をえた山内一豊の痛快物語。全四冊。


☆土佐の大名に成り上がる伊右衛門が、まだ若輩にして嫁を貰い、彼女の内助の功のおかげで、頭角を表す様が描かれている。やる気をかきたてる、夫の操縦法を心得た妻、と言うのは、いかにも日本人好みである。
 妻に乗せられた伊右衛門は、結構危ない橋を渡りながらも、順調に頭角を現し、今巻のラストでは妻の持参金で良い馬を購入している。この時、賢過ぎる妻に興ざめして辛く当たる伊右衛門を、泣いてみせて懐柔した妻千代は、役者が一枚上だ。
 堅物の伊右衛門を誘惑した小りんのエピソードも楽しく、全体にエンタメ度の高い作品であった。今後に期待。
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