砂漠 伊坂幸太郎
51P1ErR8Q2L

この一冊で世界が変わる、かもしれない。仙台市の大学に進学した春、なにごとにもさめた青年の北村は四人の学生と知り合った。少し軽薄な鳥井、不思議な力が使える南、とびきり美人の東堂、極端に熱くまっすぐな西嶋。麻雀に勤(いそ)しみ合コンに励み、犯罪者だって追いかける。一瞬で過ぎる日常は、光と痛みと、小さな奇跡で出来ていた――。 明日の自分が愛おしくなる、一生モノの物語。限定の書き下ろしあとがき収録。

☆これは読み始めてすぐに、自分の学生時代を思い出した。女っ気ゼロの将棋部に属し、5年間通ったのだけれど。生産性が一切なく、無意味に過ごしたあの時代は、確かに砂漠の前のオアシスだったと思う。当時はそんな事、思ってもみなかったけれど。
 緊張感のない、緩いムードの小説であり、特別な主張があるわけでもない。いかにも伊坂幸太郎らしいグダグダの構成だけど、読んでいてひたすら楽しく、西嶋の存在感は、出て来るだけで笑えた。
 伊坂流エンタメ青春小説の快作と評しておく。きちんとした小説が好みの人には、向かないと思う。


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