望郷 湊かなえ
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日本推理作家協会賞受賞! 都会から離れた島に生まれ、育った人々。 島を憎み、愛し、島を離れ、でも心は島にひきずられたまま―― 閉ざされた“世界"を舞台に、複雑な心模様を鮮やかに描く湊さんの連作短編(全六編)。 収録作「海の星」が日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞、選考委員の北村薫氏は、 「鮮やかな逆転がありながら、小説の効果のための意外性のため無理に組み立てられた物語ではない。筋の運びを支える魚料理などの扱いもいい。(中略)――ほとんど名人の技である」と絶賛。 自身も“島"で生きてきた湊さんが「自分にしか書けない物語を書いた」と言い切る会心作。島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。


☆私は比較的近い呉市の出身なので、舞台となった島が因島で、O市が尾道だとすぐにわかった。作者の履歴を確認し、自身の出身地を舞台にした連作集、すなわち「望郷」なのだな、と得心。ミステリとしてよりも、私小説風の作品として読んだ。

 故郷への思いが、単純な賛美に終わるのでなく、むしろ閉鎖的な人間関係の息苦しさを描くのは、湊かなえらしくて十分楽しめたんだけど、やや無理なハッピーエンドに繋げた感はあった。受賞作の「海の星」もそこが気になったし、イヤミスの女王本領発揮かと思われた「雲の糸」も、ラストが感動作っぽくなり興ざめ。

 恐らく郷里への想いが、ラストを前向きなものに、させたのだろうと思うが、天の邪鬼な私からすれば、イヤミスとして中途半端だと感じてしまった。恐らく多くの人の受け取りと違うと思うので、この感想は参考になりません。


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