小説 イタリア・ルネサンス4 再び、ヴェネツィア 塩野七生
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塩野七生、待望の書き下ろし最新作! たった一日で、世界の命運が決した。 その日、何が起こったのか。真の勝者は誰なのか。 外交官マルコ、最後の戦い! 故国ヴェネツィアへと帰還し、外交の中枢に舞い戻ったマルコ。親友アルヴィーゼや恋人オリンピアを喪ってきた哀しみは、月日と多忙さが流し去ってくれたが、トルコの絶対君主スレイマン一世が没すると、両国間にはにわかに戦雲が立ち込める。そして、ついには誰も望まなかった全面衝突に発展し、たった一日で世界を決定的に変えてしまう運命の一戦が戦われるのだった……。一人の外交官の人生を通してルネサンス世界の興亡を劇的に描いた歴史小説四部作、圧巻の完結編。


☆今巻もやはり、文庫本としては破格の贅沢な作り。とりわけ本書中で言及される絵画を鑑賞出来るのは嬉しい限りで、この価格でも納得だ。

 外交官マルコを通して、ヴェネツィアの盛衰を描いているシリーズだが、晩年に当たる今巻では、クライマックスの海戦までは、静かな展開で、芸術家談義が楽しい。「レパントの海戦」は作者の旧作の焼き直しのようだが、本書全体ではやや浮いているように見える。それでも、緊迫感があり、読み応えがあった。

 海戦以外余り劇的な展開はなかったが、最愛のオリンピアと最期を迎えた? マルコのエピソードは秀逸で、静かな感興を覚えた。そしてふと思ったのは、この書き下ろしは、塩野七生氏自身が作家生活の総決算を意識して、書かれた物だろうと言う事だ。そう思うと、ややアンバランスな海戦のやけに詳細な記述にも、納得がいった。

 


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