崑崙遊撃隊 山田正紀
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中国大陸の奥深くにあるという伝説の地“崑崙”。そこは花々が咲き乱れ、竜や不死の一族が存在し、太古の剣歯虎(サーベル・タイガー)が守護しているという。また、この地に行き着いた者は、中国を治める事ができると信じられていた。――大陸浪人、藤村脇はゴビ砂漠で剣歯虎と遭遇したことから“崑崙”を目指すことになった。戦雲吹きすさぶ中国大陸を舞台に、秘密結社の殺し屋、謀報機関員、謎の美少年らが、さまざまな野望を抱いてくりひろげる大冒険旅行。SF長編。


☆山田正紀の本質はSF作家だと思うし、本書もSF長編と銘打たれているが、SF成分は薄く、秘境冒険もののエンタメ作であった。
 主人公を始め、キャラも立っており、ストーリーテリングも巧みな、小説巧者の作者らしい好作と思った。自殺願望を抱えているらしい主人公の、剣歯虎との出会いからストーリーを始め、彼の謎めいた過去が明らかになるに連れて、徐々に全体のストーリーの背景が見えて来る書き方は、小説作法の見本のような巧みさを感じた。
 ただ私個人の感想として、崑崙と言う地に対するイメージが全くなく、この地を制すれば中国全土を制する事になるーそのため日本軍が狙う、と言うストーリーの根幹部分にリアリティーを感じる事が出来なかった。設定がリアルなだけに、やや古さを感じてしまって残念だったのが、正直な感想である。


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