天空の蜂 東野圭吾
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奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき……。驚愕のクライシス、圧倒的な緊追感で魅了する傑作サスペンス。


☆綿密な取材の成果と思われる、ヘリコプターや原子力発電所に関する詳細な知識は、理系ミステリー作家の面目躍如で圧巻だった。仮に取材しても、相応な理解力がなければ、小説には書けないと思われ、東野圭吾ならではである。
 ただエンタメ小説として、これだけの分量を読ませるだけの、面白さがあるかと言えばやや疑問。圧巻の詳細な知識も、面倒だの一言で嫌う人も多いだろう。原発に関する問題提起と言う意義は認めるが、エンタメ作としてストーリーに馴染んでいないと感じた。
 この作品では、2人の犯人が犯行を企てるに至った経緯に、ドラマがあってしかるべきなのに、人物描写がいかにも薄味で物足りない。特に元自衛官のエリートについては、もっとドラマを作る事が出来たのではなかろうか。
 結局、詳細な理系的知識を誇る大作の割に、人間ドラマが弱いと言う評価である。
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