おれの血は他人の血 筒井康隆
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いつもは小心なサラリーマンの俺だが、いったん怒りだすと意識がなくなり、怪力を発揮してあばれだす。しまいには、人を殺してしまうかもしれない……俺はそれが怖い。三人のヤクザをいっぺんに叩きつけた俺のスゴさを見込んで、対立するヤクザの幹部が用心棒になってくれと頼んできた。それが、小さな都市を壊滅させる大抗争の発端だった。ハードボイルド・タッチの痛快長編小説。第6回星雲賞受賞作。


☆読み始めてまず、内容に相応しい見事なハードボイルドタッチの文章に感心した。しかし良く考えると、いかにも作者らしい文章である。してみると、筒井康隆はハードボイルドと相性の良い作家なのだろう。一つの町で対立しているアウトロー達を、無関係な第三者が皆殺しにするストーリーは、ハードボイルドミステリーの定番だが、怒りによって別人格に変わり、怪力の殺人鬼と化す主人公がSF的味付け。タイトルにも関わる、血のせいなのだが、いかにも怪しい疑似科学風説明を読ませて、「論理の飛躍が必要」と予防線を張っているのがニクイ。あくまで空想科学のホラ話と言うわけだ。そしてどんどん過激になる、スプラッター描写は筒井康隆の独壇場である。まとめると、筒井流ハードボイルドSFスプラッターか。今でも十分楽しめる傑作であった。

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