模倣犯1 宮部みゆき
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墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった――。未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕!

☆社会派と言うのだろうか。宮部みゆきの真骨頂を示す、読み応え抜群の作品だった。序盤からグイグイ引き込まれる、見事なストーリーテリングで、子供っぽい謎の犯人がこれでもかと人の心を踏みにじり、冷酷無比な連続殺人を世間に見せびらかす劇場型犯罪の恐怖と、犯人への嫌悪を強く感じさせられた。一見アッサリ解決したかのように見せて、真相はまだ隠されてると思うと、後を読まずにはいられない。

 吐き気を催すような、人の悪意をクローズアップして見せるので、重く暗鬱な読後感だったけど、良識派の作者なら大丈夫だろうと、この後も読む気にさせるのは、宮部みゆきの信用のなせる業だ。
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