ゴーストハント3 乙女ノ祈リ 小野不由美
51Sx1UUruuL._SX351_BO1,204,203,200_

そのクラスには呪われた席があるーー超能力少女と超常現象と事件の関係は? 次々と舞い込むSPRへの調査依頼。それらはすべて東京周辺にある湯浅高校で起こった怪現象にまつわるものだった。数々の事故や病気、山のような校内での聞き込み調査を進めるうち、笠井千秋という超能力を持った少女の存在が浮上する。事件の中心にいるのは千秋なのか。奇異な怪異の背景に潜む真実を追ううちに邪悪な意思はついにナルや麻衣をも標的にし始める! ナルと麻衣の関係も見逃せない! ミステリー色濃厚なシリーズ第3作。


☆単独でも読めるけれども、シリーズものを生かしたところに作者の創意が感じられる。主要キャラは初めから登場してるのにミステリアスで、巻を重ねる毎に新しい顔を見せてくれるのが、読み所か。今巻で少し明かされるはナルとリンの関係は、結構驚きでインパクトがあった。
 今巻のテーマは超能力を持つとされる人が、不幸な人生を余儀なくされる事で、純粋な怪奇現象より、リアリティがあって怖さを感じた。一見バラバラな多数の怪現象を、過去に起きた学校の不幸な事故と結び付けて推理し、犯人を割り出すのはミステリ風味で面白い。ただそれを呪詛による犯行で処理するのは力技で、さすがに無理を感じた。ナルと麻衣が呪いによって、危機一髪に陥るシーンも山場で小説作りとしては巧いと思ったけど、冷静に考えるとそんな馬鹿なと言う展開だ。
 超常現象に関する蘊蓄が深いのもこのシリーズの特徴で、超能力者に関しても知識が豊富で、読み応えがあった。最後にただの一般人と思われていた麻衣が、実はある力を秘めているのでは、と言う実験が出て来るが、これは少し疑問だった。役立たずに見えるからこそ、麻衣の存在意義があるのだと思うんだけど。 


小野不由美レビュー一覧