罪と罰 上 ドストエフスキー

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名訳で甦る、ドストエフスキーの代表作。

その年、ペテルブルグの夏は暑かった。大学を辞めた、ぎりぎりの貧乏暮らしの青年に郷里の家族の期待が重くのしかかる。この境遇から脱出しようと、彼はある計画を決行するが……。


☆内容は重い心理劇だが、起こっている事柄は意外と喜劇風で、イメージと違い面食らった。書名と主人公ラスコーリニコフの名前は知っていたが、これ程共感出来ない主人公と言うのも珍しい。余人には理解不能な理由で殺人に手を染め、世話になる友人達に悪態を付き、金目当てだと非難して妹の結婚を妨害し、母親が工面してくれたなけなしのお金を見ず知らずの人にやってしまう。なのにプライドだけは高く、現代風に言えば全くのクズである。


 もちろん主人公がクズだから悪いわけではない。文学的には、共感出来ないクズな主人公を妥協なく描いたところに、文豪の凄みを感じる。訳も優れているのだろうが、かなり大量の文章を一気に読まされた。下巻も大いに期待している。


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