「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔 森達也
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メディアの垂れ流す情報に感覚が麻痺していく視聴者、モノカルチャーな正義感をふりかざすマスコミ……「オウム信者」というアウトサイダーの孤独を描き出した、時代に刻まれる傑作ドキュメンタリー。


☆オウム真理教が起こした一連の事件の記憶は今でも生々しく、極悪非道な反社会的狂信者の集団で理解不能だと思っていた。つまりオウム=絶対悪と言う認識で、思考停止していたと、本書を読んで痛感した。そしてその認識が、実はテレビを初めとするマスコミによって刷り込まれていたと言う事実も。作者がこのドキュメンタリー映画の作成を構想するも受け入れられず、結局フリーの立場で自主制作するしかなかったのも、オウム=絶対悪と言うマスコミの認識にそぐわなかったからであろう。
 マスコミが世論の形成に与える影響力の大きさは、コロナ禍の現在にも見られる普遍的な問題のようだ。当時の圧倒的世論に逆らい、あえてオウム信者の立場からのドキュメンタリーに挑んだ作者は貴重な存在だ。
 思考停止したマスコミに反旗を翻し、極力中立の立場でドキュメンタリーを制作しようとした作者の労作として髙く評価する。が、オウム信者、特に荒木氏との親交が深まったあまり、やはりオウム信者側にやや肩入れしてしまった感があるのは、作者の限界か。人間的には好感を覚えるが、ドキュメンタリー制作者としては情に流されてしまうのは頂けない。



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