皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下巻 塩野七生
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聖地イェルサレムを無血開城したにもかかわらず、法王に「キリストの敵」と名指されたフリードリッヒ。法治国家と政教分離を目指し、世界初の憲法ともいうべき文書を発表したが、政治や外交だけが彼の関心事ではなかった。人種を問わず学者を友とし、自らもペンを執って科学的書物をものした。「玉座に座った最初の近代人」とも評される、空前絶後の先駆者の烈しい生を描き尽くした歴史巨編。


☆いかにも塩野好みな人物で、彼の肩を持つ思い入れタップリなこの作品もとても面白く読み応えがあった。最後まで対決姿勢を崩さなかったローマ法王に勝ち続けながら、最後は一族郎党滅んで行く。織田信長を想起したのは私だけだろうか。

 小説としては文句なしで面白いのだが、歴史学的には敗者扱いらしい彼の問題点は何だったのか、作者が終始彼を持ち上げているために、わかりにくいきらいがあった。滅びの美学を描いたわけではないと思うのだが。又、下巻では特に内容の重複した記述が多のも気になった。


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