七つの時計殺人事件 アガサ・クリスティー
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チムニーズ館に招かれた客の一人が、睡眠薬の飲みすぎで死んだ。朝寝坊の彼を驚かそうと、ベッドの下に置いたはずの8個の目覚し時計は、なぜかマントルピースに整然と並んでいた。しかも7個だけ―。冒険好きのバンドルは、謎の解明に乗り出した。そして次の犠牲者が―。セブン・ダイヤルズの秘密とは?訳知り顔のバトル警視は、一体何を知っているのか?軽快な長編。


☆ヒロインのバンドルは「おしどり探偵」タッペンスを彷彿とさせる活発なお転婆娘で、父親など個性的なキャラとの絡みが絶妙でユーモラス。お転婆娘の冒険ミステリーは読んで楽しいクリスティお得意のパターンで、裏芸と言ったところか。

 全体にコメディタッチの作品で、連続殺人が起こってるのに、あまり緊迫感がなく緩い雰囲気。ポイントとなっている「セブンダイヤルズ」は、参加メンバーをナンバーで呼んで正体を明かさない秘密結社みたいな犯罪組織らしく、そこを無鉄砲なバンドルが潜入捜査した事から話が大きく動く。怪作「ビッグ4」を思い出させるB級っぽさで、浮世離れした感は否めないが、叙述トリック的仕掛けが施されており、バンドルの視点で読んでいると真相が明かされた時、アッと驚かされるのは請け合いである。真犯人はさほど意外ではなかったのだが。


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