坂の上の雲(七)司馬遼太郎
51FoQh-hFbL


各地の会戦できわどい勝利を得はしたものの、日本の戦闘能力は目にみえて衰えていった。補充すべき兵は底をついている。乏しい兵力をかき集めて、ロシア軍が腰をすえる奉天を包囲撃滅しようと、日本軍は捨て身の大攻勢に転じた。だが、果然、逆襲され、日本軍は処々で寸断され、敗走する苦境に陥った。


☆どう考えても兵力の差は歴然としているのに、間違って勝ってしまった日本軍。ロシアの硬直し腐敗した政体と、日本軍を過大評価し恐れた将軍の重大な判断ミスに助けられて辛勝したものの、ほとんど余力はなかったはず。だが、恐らく内実を知らされていない一般国民は、太平洋戦争へと突入する日本を支持したわけで、情報統制の恐ろしさを感じる。

 後半は強大なバルチック艦隊が紆余曲折の末、日本に接近。日本海海戦の決戦に至るまでが描かれているが、海軍でも本来戦力的には勝ち目のない日本が劣勢を覆して勝利するわけだが、史実として日露戦争の勝利を喜ぶのはあまりに表面的だろう。純朴で日本国のために命を捧げた人々のおかげで勝利した戦争が、結局は彼らを地獄に堕とす大戦へと繋がった歴史から目を背けてはならない。
司馬遼太郎レビュー一覧