サイレンス 秋吉理香子
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一気読み必至の偏愛サスペンス。 婚約者が雪深い孤島で突然失踪……、故郷の島には恐ろしい“秘密”があった。 深雪は婚約者の俊亜貴を連れ、故郷の雪之島を訪れる。結婚してありふれた幸せを手にいれるはずだった。ところが、祝宴の席で深雪は思いもよらないことを島民たちから知らされ、状況は一変する。やがて俊亜貴は行方不明に……。この島、何かがおかしい――。『暗黒女子』の著者が、人間の奥底にある執着心と狂気を描いた傑作サスペンス。


☆「イヤミス」を得意とする作者なので、そのつもりで読んだが、都会暮らしと島の暮らし、それぞれの嫌な点が赤裸々に語られる序中盤は本領の面白さ。が、読んでいて着地点をどこに求めるのか気になった。エンタメ小説の常道として、ヒロインが島での暮らしを選ぶのだろうと予想はついても、島暮らしの嫌な点をこれだけ見せつけられて、明るい未来への展望が開けるとは思えなかったのである。

 絵に描いたようなクズの最低男と結ばれる事だけは回避されたものの、この余りにも楽観的なハッピーエンドも違和感を覚えた。例えば婚約者について興信所に調べさせる行為を肯定的に捉えるのは、決して褒められた事でなく、陋習にこだわる島の保守的な体質の象徴と思うが、そんな島の未来を美化したラストはやはり違和感を覚えずにいられなかった。

 もっとも作者も心得ており、最後に若い親戚の彼氏を冬に連れて来るよう促したヒロインの悪意を描いて「イヤミス」として一応の面目は果たし、単純なハッピーエンドで終わらせなかった点は評価したい。


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