ギリシャ棺の秘密 エラリー・クイーン
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盲目の大富豪・ハルキス氏の死が全てのはじまりだった―。葬儀は厳かに進行し、遺体は墓地の地下埋葬室に安置された。だが直後、壁金庫から氏の遺言状が消えていることが発覚する。警察の捜索の甲斐なく、手掛かりさえも見つからない中、大学を卒業してまもないエラリーは、棺を掘り返すよう提案する。しかし、そこから出たのは第二の死体で…。天才的犯人との息づまる頭脳戦!最高傑作の誉れ高い“国名シリーズ”第4弾。


☆これは一読して非常に面白かった。棺を掘り返したら、新しい死体が折り重なるように出てくる、という印象的な事件から始まり、途中でエラリーが光明に思われる推理を披露して犯人を名指しで指摘するも、すぐに反証が出て来て、父に慰められる始末。その後も彼の上をいく真犯人に翻弄され続けるが、最後に意外な真犯人を追い詰めて銃撃戦になり、犯人は射殺されるがエラリーも狙撃されて負傷すると言うアクションシーンや、クイーンには珍しい恋愛要素も入ってエンタメ度は満点。    個人的には真犯人の意外性だけでも楽しめたし、エラリーの推理のアラ探しをするつもりは全くない。私は本格ミステリの醍醐味は、名探偵の名推理に膝を打って感心すれば良いのだと思っており、細かい難点を指摘して悦に入るのは好きな人に任せれば良いのだと思う。趣向としては面白いし大賛成だが、自力で推理して名探偵に挑戦しようなんて露とも思わないのだ。本格ミステリ愛好家の態度としては良くないのかも知れないが、そうゆう他力本願のミステリの楽しみ方も十分アリではなかろうか。懲りに凝ったミステリでエンタメ度が高く十分楽しませてくれた本作を、私は高く評価する。

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