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聖夜に惨劇は起きた!一族が再会した富豪の屋敷で、偏屈な老当主リーの血みどろの死体が発見される。部屋のドアは中から施錠され、窓も閉ざされているのに、犯人はどうやって侵入したのか?休暇返上で捜査にあたるポアロは被害者の性格に事件の鍵が隠されていると考えるが…クリスマス的趣向に満ちた注目作。


☆タイトルから、ひょっとしてコメディ? と思ったが、とんでもない。ガチガチの本格ミステリーだった。聖夜に密室で血塗れの殺人が起きる趣向で、皆に嫌われてる偏屈者の金持ちが、クリスマスに家族を一同に集めるのは、まるで「クリスマスキャロル」みたい。

 殺害動機のない方が珍しいキャラの中、意外な真犯人を設定したのは、さすがクリステイー。ポアロの謎解きで、かなり冒頭の箇所から、伏線が貼られていたとわかるのは快感。「血塗れ」の密室は、派手な演出だけど、そうなるよう仕向けた犯人の行動は理性的。犯人の意外性と、その人物の理性的な犯行が明らかになってゆく終盤は、正に本格ミステリーの味わいだった。

 有名作ではないけれど、本格ミステリーの教科書みたいな傑作と評価したい。


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