光の帝国 常野物語 (常野物語) 恩田陸
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膨大な書物を暗記するちから、遠くの出来事を知るちから、近い将来を見通すちから―「常野」から来たといわれる彼らには、みなそれぞれ不思議な能力があった。穏やかで知的で、権力への思向を持たず、ふつうの人々の中に埋もれてひっそりと暮らす人々。彼らは何のために存在し、どこへ帰っていこうとしているのか?不思議な優しさと淡い哀しみに満ちた、常野一族をめぐる連作短編集。優しさに満ちた壮大なファンタジーの序章。


☆長いファンタジーの序章と言うことで、手探り感が強い作品群。いわゆる「超能力」を持つ人たちらしいのだが、各話が関連があるのかも定かではないし、かなり曖昧模糊とした印象。しかしながら表題作は~帝国と言う言葉とは裏腹の、異能故に迫害を受ける一族の人たちの悲哀を描いたもので、涙腺崩壊ものの感動作。この作品だけでも最高評価を進呈したい。
 知的で平和な生活を送り、異能はあっても決して目立った使い方をしない一族の人間愛が全編を通じて感じられ、逆にそういう人たちを放っておかず迫害する世界の醜さが浮き彫りになった。基本理屈でなく「感じる」スタイルで、本当の優しさとは何か考えさせられた。


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