最後にして最初のアイドル 草野 原々
無題


“バイバイ、地球――ここでアイドル活動できて楽しかったよ。"

第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞
第48回星雲賞(日本短編部門)
第27回暗黒星雲賞(ゲスト部門)
第16回センス・オブ・ジェンダー賞(未来にはばたけアイドル賞)

SFコンテスト史上初の特別賞&「神狩り」以来42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞し、SF史に伝説を刻んだ実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、異能の声優たちが銀河を大暴れする書き下ろし声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!
解説:「げんげん♥SF道」前島賢


☆これは凄い。表題作は「ラブライブ」二次創作だったそうだけど、陳腐なあの話をハードSFにするなんて考え付く事自体キチガイの発想。が、それを徹底して作り込むとこうなってしまうとは。私は軟弱なSFファンなので科学的な裏付けがどこまであるかなんてそもそも気にしないけど、何となくウソ八百でない感じはするのでそれで十分。キチガイと紙一重の才能を感じた。他2作も似たような作風だが、とにかく希有壮大なバカSFで、極めてSFマインドに溢れている。ただ残念なのはいわゆる「オタク」文化が濃厚な題材のため、それだけで黙殺されたり、面白さが十分に伝わらない危険性がある事。実際私は50歳代のオタク人間で「ラブライブ」は良くわかるんだけど、ソシャゲとかガチャ、課金などについてはニュースで字面を見た事があるだけなので、2作目は辛かった。又ギャップ萌えの狙いもあるのだろうけど、グロテスクさやカニバリズムの要素などが容赦なく、とても万人向けとは思えない。
 まとめれば、読む人を選ぶ猛毒要注意の凄まじい怪作と言う評価。この作家が今後どのように進化していくのか要注目と思った。


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