教養としての10年代アニメ 町口 哲生
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受講条件は週20本の深夜アニメ視聴!?あまりの本気(ガチ)さにネットを中心に話題となった近畿大学の講義が遂に書籍化!!

●本書の内容
教養という概念は「人格は形成されるもの」という考えと結びついている。人格を形成する役割はかつて哲学や純文学が担ってきたが、ゼロ年代(2000~09年)になると、若者に対するポップカルチャーの影響は無視できないものとなった。本書では、「10年代アニメ」(2010年代に放映されたアニメ)を、教養として分析することで現代社会や若者についての理解を深めていく。

●装画イラスト
『COPPELION』の井上智徳先生、渾身の書き下ろし!!

●本書の構成
<はじめに>
インフォテインメントとしてのアニメ/ホーリズムとしての一〇年代アニメ 等

<第1部 自己と他者>
第1章『魔法少女まどか☆マギカ』他者との自己同一化
ゼロ年代アニメの総決算/『ファウスト』からの引用と変更点/可能世界/イヌカレー空間/絶望少女もの 等

第2章『中二病でも恋がしたい!』自意識と他者の存在
『氷菓』における掟破り/『響け!ユーフォニアム』の新基軸/『中二病でも恋がしたい!』はラブコメか/ゴシック精神と中二病 等

第3章『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』スクールカーストとぼっち
残念系/空気を読む/意識高い系/ライトノベルが描くリアリズム 等

<第2部 ゲームの世界>
第4章『ノーゲーム・ノーライフ』ゲーム理論と社会適応
ファンタジーの世界/『ノゲノラ』とゲーム理論/コミュニケーション障と引きこもり 等

第5章『ソードアート・オンライン』オンラインゲームと一人称視点
浮遊城と世界樹/ナーヴギアの実現可能性/一人称視点/メタ・オリエンタリズム 等

<第3部 未来社会の行方>
第6章『とある科学の超電磁砲』クローン技術とスマートシティ
ヒトクローン個体/学園都市/スマートシティ/超監視社会 等

第7章『COPPELION』生き残りとリスク社会
遺伝子操作/コラテラル・ダメージ/リスク社会/ハードサヴァイヴ系/太陽の塔が意味するもの 等

<おわりに>
世間内存在としてのオタク/メタ視点を欠いた再帰性 等

●著者プロフィール
文芸評論家。専門は哲学・現代思想。近畿大学では映像・芸術基礎、映像・芸術論、現代の社会論を教えている。


☆この教授の講座を取る条件が「週20本以上のアニメ視聴」と言うことで有名になったらしい。その後アニメオタクには睡眠時間なんか4時間で十分だろ、と言う趣旨の発言が続き、なかなか上手にあおったものである。さて、この書名「教養のための・・・」はマジメに内容を踏まえているのだけど、あえて誤読される事を想定したものだろうか。私も含めた中高年の一般人が「アニメなんてバカにしてたけど、最近は国際的にも認められた日本文化らしいし、教養としてこのくらいのアニメは見ておけと言うガイドブックかな」とか。で、実の所私のような中途半端なアニメオタクにはそういう読み方が出来たのだけど、本当にアニメをバカにしてた人々にとっては「?」な内容だったのでは。かつては誰でも知ってる国民的アニメ(サザエさんとか、ドラえもんとか)と言うものがあったが、本書で筆者が取り上げた10年代アニメは全然そういうものではない。0年代の「エウァンゲリオン」とか「涼宮ハルヒ」とかならまだしも、一般人は誰も知らねえよ、と言うラインナップなのだ。
 が、筆者の意図はそうゆう「教養書」ではなく大真面目な文化論なのだから、その意味で本書を批判するのはバカを公言するようなもの。少なくとも私にとっては、このブログで掲載するアニメリンクの作品選びの参考に大いになったし、現在連載中の「とらドラ」を含めた過去のラインナップも間違ってなかったと確信出来、次に予定してる「魔法少女まどか☆マギカ☆」の妥当性も担保出来たのである。
 個人的には「10年代アニメ」のキーワードになってるらしい社会現象「中二病」「ぼっち」「スクールカースト」「意識高い系」・・・などの用語に関して詳しい知見を得ることが出来て勉強にもなったし、面白かった。私はオタク人間を自負しているが、興味ある分野が「詰将棋」と言う超マイナーなものなので、新発見もいろいろと。「ぼっち」の説明は正しく自分の事だと思ったが、「ランチメイト症候群」には呆れた。学校や職場で一緒に昼食を取る相手がいない状態を苦にして、不登校などの原因になるらしいが、「ぼっち」の覚悟を決めるのがそんなに難しい事なのか? 私などむしろ昼食を他人と一緒に取るなんてまっぴらごめんな人間で、職場では確実に一人で食べられるようにしてると言うのに。基本的に人とは付き合わない。そうゆうキャラ作りがどれだけ有利な事か。仕事がなければ定時で帰るのも当たり前だけど、他人を気にしてると遠慮しちゃうんだよね。若い頃の私はそうだった。「ぼっち」を苦にするのはバカだと今なら思う。


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