宮本武蔵〈2〉 吉川英治
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沢庵の温かい計らいで、武蔵は剣の修行に専念することを得た。可憐なお通を突き放してまで、彼が求めた剣の道とは? だが、京畿に剣名高い吉岡一門の腐敗ぶり。大和の宝蔵院で味わった敗北感、剣の王城を自負する柳生の庄で身に沁みた挫折感。武蔵の行く手は厳しさを増す。一方、又八は堕ちるところまで堕ちて、偶然手に入れた印可目録から、佐々木小次郎を名乗ったりする。


☆一巻に引き続きグイグイ物語に引き込まれかなりの大冊を短時間で読み終える事が出来た。このリーダビリティは素晴らしく、国民文学作家とまで呼ばれる吉川英治の面目躍如である。ただ今巻では道場破りに乗り込んだ武蔵が肩透かしを食ったり、戦わずして逃亡を余儀なくされたり、やや消化不良に不満も残る。それより宿命のライバル佐々木小次郎の登場と、彼を騙って醜態を晒す又八のクズっぷりが注目。殺人も辞さない凶悪さを持つが颯爽とした若き美剣士佐々木小次郎は無骨な武蔵と好対照なキャラクターで、人物造形の巧みさはさすがである。同様に幼なじみでありながら進む道が月とスッポンのような武蔵と又八の対照も実に面白く、エンタメ性は抜群だ。
 多少不満は残るがエンタメ性の高い大衆文学の傑作と評しておく。


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