プレイバック レイモンド・チャンドラー
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私立探偵フィリップ・マーロウは、高名な弁護士から若い女の尾行を依頼される。だが、この仕事はなにかきな臭い気配がするのだった……村上春樹新訳〈フィリップ・マーロウ〉シリーズ第7作。


☆チャンドラーの遺作らしいが、個人的には初読。長編はほぼ全作読んでる筈だが読み方の順番はそれで良かった。特に「長いお別れ」は先に読んで置いた方が良いと思われる。
 ハードボイルドである事を差し引いてもミステリ成分はいつになく薄い。登場人物も舞台も少な目だし、何より謎解き要素がほとんどないのだ。逆にマーロウの魅力に比重が掛かっていると読んだが、やはりいつもと少し違う気がしたのは「遺作」だと思うからではないだろう。舞台となっているエスメラルダと言う架空?の都市では、警察もいつものように腐敗した悪徳警官の巣窟ではないようで、逆に正義感ある硬骨の警官が頼もしかったりする。マーロウはいつもの硬骨漢で有名な決めゼリフを口にするし、女に言い寄られても袖にしてしまう、かと思いきや本作ではとりあえず寝てしまっている。それでマーロウの魅力が落ちる訳では泣く、人間臭くて悪くないのだけど。
最後に以前求婚された女性から再び求婚されるシーンが出て来るのは、本筋と全く関係ないと思うのだが、他にも意味不明なシーンがかなりある。チャンドラーの、そしてマーロウのファンであればそれなりに興味深いのだけど、ミステリとしては高い評価は出来ない。
 結論として、客観的に評価すれば凡作かも知れないが、チャンドラーファンとしては十分に読む価値がある作品だった。


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