ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ 三上延
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静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。物思いに耽ることが増えた彼女はついにこう言うのであった。必ず答えは出す、ただ今は待ってほしいと。 ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。いわくつきのそれらに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。 脆いようで強固な人の想いに触れ、二人の気持ちは次第に近づいているように見えた。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。この邂逅は必然か? 彼女は母を待っていたのか? すべての答えが出る時が迫っていた。


☆「いろいろと面倒」と言う、あるキャラの人物評がよく当てはまる栞子さん。彼女だけでなく、今回登場する古書事件に関わる人々にも同様の印象を受けた。屈折してると言うか、何かを隠していると言うか。本についてのウンチク話は相変わらず面白いのだが、こう面倒な人ばかりだと引っかかりを覚えるのも確か。
 長々と引き延ばされて来た五浦君との関係も結婚を前提に交際を始めるらしい栞子さんだが、その前に別離している母親と話さないと、と言うことで、自分と酷似した母親を克服すると言う彼女の重要課題が見えて来る。周囲をヤキモキさせる程の美人で明晰な頭脳なのに、本好き過ぎていろいろと禍根を残してしまった母親に自分の姿を重ねてしまって優柔不断な行動を取る栞子さんだが、ちょっと凡人には納得し辛いものがある。いくら本好きでも、それが家族を捨てる理由に繋がるわけはない。でもそんな酷薄な血を克服しようと一歩を踏み出す栞子さんを応援したい。


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