敵は海賊・海賊版―DEHUMANIZE 神林長平
神林流の仕掛けに溢れた、一筋縄ではいかないスペースオペラ。海賊以上に凶暴な黒猫型異星人アプロと相棒であるラテルと言う海賊課刑事のコメディタッチの掛け合いが名物だが、今作は最凶の海賊トウ冥・シャローム・ツザッキイの誕生秘話と言う形をとっており、アプロらが登場するまでは結構読むのに難渋する。が、なぜかラテルの隠し子?のようにように天使のメイシアちゃんが登場する辺りから一気に盛り上がり、ドタバタ活劇に突入。どうやら魔女?の作り出した異世界に閉じ込められたらしく、海賊課のラテルやアプロを初め、各登場人物や人格を持った戦闘機のカーリーヤラジェンドラにまでドッペルゲンガーが出現し、本物ニセ物入り乱れての場外乱闘はストーリーを追うだけでも大変だった。
個人的に今作のMVPは天使のメイシア。オムツが必要な乳幼児姿で登場するが、優しい母親役のアンドロイドを得てどんどん成長していき、最期は父のラテルを助けるべく参戦する美少女聖戦士として命を落とす。ロリコン魂をくすぐる素晴らしい萌えキャラと賞賛しておく。
さて大乱戦の末に何とか現実世界に帰還するのだが、その時海賊トウ冥だけは本物が異世界に残り、ドッペルゲンガーが現実世界に戻る。これは何者にも支配される事を拒否する彼の鉄の意志を示している。すなわち魔女の作った世界で操られるドッペルゲンガーである事を嫌い、あえて「海賊版」のドッペルゲンガーとして現実世界でも破壊者であり続けようとしたわけである。
ここまで著述したところで完成を前にしたCAWシステムは何者かによって破壊される。それは恐らく、著述される登場人物である事を拒否したトウ冥の仕業であろう。依頼人として現れた美しい王宮の戦士に恋をしてその心の弱さを突かれ、人間性を捨てた海賊として誕生したトウ冥。今後もラテルやアプロとの死闘を期待したい。
神林長平レビュー一覧
火星の砂漠の町サベイジにあるバーで、海賊・ヨウ冥はフィラール星の女官長の依頼を受ける。それは通商使節として訪れた火星で行方不明になった王女を捜し出してほしいというものだった──ヨウ冥を追う黒ネコ型宇宙人にして海賊課のお荷物刑事のアプロと、相棒ラテルがおりなす人気シリーズ第一長篇。
神林流の仕掛けに溢れた、一筋縄ではいかないスペースオペラ。海賊以上に凶暴な黒猫型異星人アプロと相棒であるラテルと言う海賊課刑事のコメディタッチの掛け合いが名物だが、今作は最凶の海賊トウ冥・シャローム・ツザッキイの誕生秘話と言う形をとっており、アプロらが登場するまでは結構読むのに難渋する。が、なぜかラテルの隠し子?のようにように天使のメイシアちゃんが登場する辺りから一気に盛り上がり、ドタバタ活劇に突入。どうやら魔女?の作り出した異世界に閉じ込められたらしく、海賊課のラテルやアプロを初め、各登場人物や人格を持った戦闘機のカーリーヤラジェンドラにまでドッペルゲンガーが出現し、本物ニセ物入り乱れての場外乱闘はストーリーを追うだけでも大変だった。
個人的に今作のMVPは天使のメイシア。オムツが必要な乳幼児姿で登場するが、優しい母親役のアンドロイドを得てどんどん成長していき、最期は父のラテルを助けるべく参戦する美少女聖戦士として命を落とす。ロリコン魂をくすぐる素晴らしい萌えキャラと賞賛しておく。
さて大乱戦の末に何とか現実世界に帰還するのだが、その時海賊トウ冥だけは本物が異世界に残り、ドッペルゲンガーが現実世界に戻る。これは何者にも支配される事を拒否する彼の鉄の意志を示している。すなわち魔女の作った世界で操られるドッペルゲンガーである事を嫌い、あえて「海賊版」のドッペルゲンガーとして現実世界でも破壊者であり続けようとしたわけである。
ここまで著述したところで完成を前にしたCAWシステムは何者かによって破壊される。それは恐らく、著述される登場人物である事を拒否したトウ冥の仕業であろう。依頼人として現れた美しい王宮の戦士に恋をしてその心の弱さを突かれ、人間性を捨てた海賊として誕生したトウ冥。今後もラテルやアプロとの死闘を期待したい。
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