力士探偵シャーロック山 田中啓文
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銅煎部屋で唯一の三役力士・斜麓山は大のミステリー好きで稽古よりも本の続きが大事。自分は相撲取りではなく探偵なのだと言いはり、付け人の輪斗山は悩まされ通しだ。しかし、彼らの周辺ではなぜかシャーロック・ホームズの名作ばりの事件が続発。はじめて本物の事件を解決しようと乗り出す斜麓山だが、思わず勇み足を!?爆笑の本格ミステリー。


☆これはもう駄洒落小説の大家田中啓文にしか書けない作品。登場人物のことごとくがシャーロック・ホームズの無理矢理な駄洒落で、冒頭を読んだだけであまりの下らなさに脱力感を覚えるが、ここで馬鹿馬鹿しいと思うなら読まない方が良い。その後も徹底した駄洒落でホームズの名作を料理した空前絶後のパロディで、原作を知っていれば感心したくなる下らなさだ。特に「薄毛連盟」と「最後の事件」はタイトルだけでなく内容も原作をもじっており、おおっと唸りたくなった。
 本作のもう一つの売りは、シャーロック・ホームズと相撲の力士と言う奇想天外な組み合わせで、これも田中啓文ならではの着想だ。普通はどう考えても成立しない力士探偵を書いてしまうのが凄いと思うが、斜麓山(シャーロック・ホームズ)・輪斗山(ワトスン)・現役時の四股名が虎南の銅煎親方(コナン・ドイル)などのキャラが生きていて、読んでいて楽しくエンタメ性は抜群だ。モリアティ教授を想起させる宿敵と滝の前で決闘したのを最後に現役を引退し念願の探偵事務所を開業した斜麓山が復活する事はなさそうだけど、原作同様、もしかしたらと期待している。


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