Boy’s Surface 円城塔
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☆読むのにとても時間が掛かり、今日帰りのJRの中でも読み終えられなかったので、無人駅に降りてからベンチで数十分使い何とか読み終えた。私は普段司馬遼太郎の歴史物なんか読み飛ばして高速で読書「してるのだけど、本書は読み飛ばしたら本当に何も頭に残らない感じがして丁寧に読むしかなかったのだ。
 恋愛小説と言う噂だったので、表題作「Boy's surface」がてっきり少年の話かと思ったのは私だけだろうか。実はBoyと言うのは人名で物理学用語らしいのだが、わかるわけねえだろ! と言う感じで、まともな小説ではなく、激しく読者を選ぶと思う。個人的には筒井康隆後期の「虚構船団」以後の実験的作品を想起したのだが、「恋愛小説」を読もうと思ってるならパスした方が良い。まあ、初めの1ページ読んだらわかると思うが。その後いくら読んでもわかり易くなることは全くないし、普通の意味で男女の恋愛なんて少しも描写されてはいない。あえて言えば恋愛小説を解析した難解なログを読まされる感じだろうか。
 少なくても私にはほとんど理解不能だったが、高等数学や物理学の用語が頻出し、さらにその他の雑学的な要素も山盛りで、作者が専門の物理学のみならず教養も凄いことがわかる。ところがそうしたわけのわからない文章の羅列を追っていくのが不思議と面白くてクセになる。まるで難解な現代詩でも読んでるみたい。きっとSF好きな人の半分くらいはハマるのではなかろうか。逆に言えばまるで受け付けない人も多いだろう。
 たふん「こんなの小説じゃない!」と腹を立てる人の方がまともな感覚の文学好きだと思う。「SF」も「SM」も大好きな私みたいな変態性癖な人なら面白く読める本かなあ。


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