珈琲店タレーランの事件簿 3 ~心を乱すブレンドは 岡崎琢磨
☆大人気のキャラミスシリーズが本格長編ミステリに挑戦。それも殺人ではないが密室犯罪と言うチャレンジには拍手である。ラノベらしい読み易さに加えて本格ミステリらしい伏線や意表を突くストーリー展開などとても楽しく読むことが出来た。スタイルを変えた3巻目はこれまでで一番良いと思う。
もっとも本格ミステリに挑戦した、と言うレベルで、ツッコミ所も満載。面白ければOKと言う立場の私的にはトリックの整合性など気にならないのだが、犯罪の動機や必然性は疑問だらけ。日常派ミステリとしてはNGなんだろうけど、殺人でもないのにこんなに手の込んだ犯行に及ぶものだろうか? 真犯人は正常な判断の出来ない心理状態にあったと申し訳みたいな釈明を書いているが、さすがにこんな動機は無理があると思った。
そして「キャラミス」として「ビブリア古書店」シリーズの亜流と見られている本作だけど、キャラクターの魅力が一番負けているところ。ヒロインであり名探偵役の美星も地味で変な所だけ強情なインパクトに欠けるキャラだけど、語り手の男のキャラが弱過ぎて3巻読んでもまるでイメージがわかない。そういう基本設定にも問題を感じるが、本作では事件関係者がことごとく好感の持てないキャラなのがとても気になった。関係者を集めて美星が謎解きを披露する本格ミステリらしい山場で、謎解きの快感より人間の醜さや弱さと言った負の感情ばかり見せ付けられるので読後感が良くないのだ。もちろん苦い結末にしても良いとは思うが、それならこんなある意意味しょうもない犯罪でなく殺人にして欲しかった。結局「日常の謎解き」と言うライトミステリの枠内で本格ミステリを目指すのは無謀だったのではなかろうか。
苦言は呈させてもらったが、本当に読んでて楽しかったし、作者は腕を上げていると思う。今後に大いに期待だ。まあ、長編本格ミステリはやめた方が良い。殺人でない「密室」なんて、クリープのないコーヒーみたいなものだ。
岡崎琢磨レビュー一覧
実力派バリスタが集結する関西バリスタ大会に出場した珈琲店“タレーラン”の切間美星は、競技中に起きた異物混入事件に巻き込まれる。出場者同士が疑心暗鬼に陥る中、付き添いのアオヤマと犯人を突き止めるべく奔走するが、第二、第三の事件が…。バリスタのプライドをかけた闘いの裏で隠された過去が明らかになっていく。珈琲は人の心を惑わすのか、癒やすのか―。美星の名推理が光る!
☆大人気のキャラミスシリーズが本格長編ミステリに挑戦。それも殺人ではないが密室犯罪と言うチャレンジには拍手である。ラノベらしい読み易さに加えて本格ミステリらしい伏線や意表を突くストーリー展開などとても楽しく読むことが出来た。スタイルを変えた3巻目はこれまでで一番良いと思う。
もっとも本格ミステリに挑戦した、と言うレベルで、ツッコミ所も満載。面白ければOKと言う立場の私的にはトリックの整合性など気にならないのだが、犯罪の動機や必然性は疑問だらけ。日常派ミステリとしてはNGなんだろうけど、殺人でもないのにこんなに手の込んだ犯行に及ぶものだろうか? 真犯人は正常な判断の出来ない心理状態にあったと申し訳みたいな釈明を書いているが、さすがにこんな動機は無理があると思った。
そして「キャラミス」として「ビブリア古書店」シリーズの亜流と見られている本作だけど、キャラクターの魅力が一番負けているところ。ヒロインであり名探偵役の美星も地味で変な所だけ強情なインパクトに欠けるキャラだけど、語り手の男のキャラが弱過ぎて3巻読んでもまるでイメージがわかない。そういう基本設定にも問題を感じるが、本作では事件関係者がことごとく好感の持てないキャラなのがとても気になった。関係者を集めて美星が謎解きを披露する本格ミステリらしい山場で、謎解きの快感より人間の醜さや弱さと言った負の感情ばかり見せ付けられるので読後感が良くないのだ。もちろん苦い結末にしても良いとは思うが、それならこんなある意意味しょうもない犯罪でなく殺人にして欲しかった。結局「日常の謎解き」と言うライトミステリの枠内で本格ミステリを目指すのは無謀だったのではなかろうか。
苦言は呈させてもらったが、本当に読んでて楽しかったし、作者は腕を上げていると思う。今後に大いに期待だ。まあ、長編本格ミステリはやめた方が良い。殺人でない「密室」なんて、クリープのないコーヒーみたいなものだ。
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