青列車の秘密 アガサ・クリスティー
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走行中の豪華列車内で起きた陰惨な強盗殺人。警察は被害者の別居中の夫を逮捕した。必至に弁明する夫だが、妻の客室に入るところを目撃されているのだ。だが、偶然同じ列車にのりあわせたことから、事件の調査を依頼されたポアロが示した犯人は意外な人物だった! 初期の意欲作が登場。


☆ミステリーの女王クリスティーの初期長編。あまり評価されていないようだが、それなりに面白く読むことが出来た。が、一番の問題は構成。青列車(ブルートレインの訳語だが、これも困った)で殺人が起きるまでが、文庫で130ページもあって長過ぎ、退屈で読むのが苦痛だった。実際読破した後でも全く印象に残っていないし、エンタテイメントとして大きな欠陥だと思う。なるべく早く殺人を起こして読者を注目させるのが常道の書き方だろう。
 事件が起きた後は楽しく読めたのだが、謎解きミステリ要素のあるサスペンススリラーと言う感じで、本格ミステリを期待するとアテが外れる。途中から話が妙に広がって、犯人グループが実は昔からの悪党だったと言うのは後出しジャンケンみたいなズルさを感じた。恋愛要素も重視されているが、聡明な年上女性がだらしない年下の男に惹かれるのはリアルなようで味が悪い。自信満々で勝手に事件の解決に乗り出すいつものポアロだけはホッと和ませてくれたが、逆に言うと、妙に数多い登場人物に魅力が感じられなかったとも言える。


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