蜘蛛の糸・杜子春 芥川龍之介
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地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落っこちる『蜘蛛の糸』。大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福をみつけた『杜子春』。魔法使いが悪魔の裁きを受ける神秘的な『アグニの神』。健康で明るく、人間性豊かな作品集。


☆文豪芥川龍之介が少年向けに書いた作品を集めたもの。だが芥川の名前ですぐに思い浮かべる表題2作品はジュブナイルの域を超えた名作であり、他も粒揃いで十分読み応えがある。
 「蜘蛛の糸」や「杜子春」は、少年向けとしてはそれぞれ教訓話として読むことが出来るが、大人が読む場合は、いざとなれば他人を蹴落としてエゴ丸出しになる人間の醜さを描いた作品として読めるし、それに耐えるだけのクオリティがあるのが名作である証拠だと思う。
 やや出来の劣る作品も含まれるので満点評価はしないが、十分大人の鑑賞に足るジュブナイル作品集であった。


芥川龍之介レビュー一覧