将棋殺人事件 竹本健治 
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謎々を拾った者が、次第に心を病み、墓地で死体を掘り返す――六本木界隈である怪談が広まっていた。そんなとき静岡で大地震が発生、土砂崩れの中から二つの屍体が発見される。屍体と怪談との類似点に注目、調査を始めた天才少年棋士・牧場智久が到達する驚愕の真相とは? 書き下ろし短編「オセロ殺人事件」収録。


☆私は将棋ファンであり、中でも詰将棋に関してはマニア。そのため本書のモチーフはど真ん中のストライクで、とても興味深く読んだのだけれど、公平な目で考えると高評価はし辛い。内容はミステリとファンタジーの境界に投じられた変化球と言う感じで、本書では中途半端な印象しか受けなかった。私はミステリだと思って読んだのだけど、これだけ脈絡不明な伏線を張り巡らせておいて、このオチには納得出来ない。本格ミステリならアンフェアだと思った。逆にファンタジーホラーとして考えれば、本格ミステリ風の構成が邪魔をしている。もっと正面から人間心理の闇を描けば良かったのではなかろうか。
 その他残念な点がいくつか。まず天才少年とその姉やら年上女性と言ういわゆる「おねショタ」設定は生理的に受け入れ難かった。女性読者には受けるかも知れないが。もう一つ、「将棋」「詰将棋」についてよく調べて書いたのだろうと思われるが、調べた内容を書いてると読者に感じさせるのはいかがなものか。特に「天野宗歩」にわざわざ振仮名を振って「そうふ」と読ませるのは残念。将棋好きなら「そうほ」と読むのが普通だろう。


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