水滸伝 16 馳驟の章 北方謙三
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梁山泊は戦によって、潰滅寸前にまで追い込まれていた。回復の時を稼ぐため、侯健(こうけん)と戴宗(たいそう)が偽の講和案を持って開封府に近づく。また、晁蓋(ちょうがい)を殺した史文恭(しぶんきょう)が再び動き出した。名を変え、商人になりすまし、次なる標的のそばで暗殺の機を待ち続けている。それに対し、公孫勝(こうそんしょう)は袁明(えんめい)の首を狙っていた。堅牢な守りをかいくぐり、いま、致死軍が青蓮寺を急襲する。北方水滸、暗闘の十六巻。


☆国に敵対する一大勢力となった梁山泊に本気を出し始めた宋国側。壊滅の危機に陥って、時間を稼ぐため偽りの講和を持ち掛ける、と言う巻。死傷者がかさんで、馴染みのキャラの中にも消える者が増え始めるが、対する国側はまだ人材にも余裕があって、彼我の力量差をひしひしと感じさせられる。滅びに向かうのは味方だけでなく、晁蓋を暗殺した史文恭が刺客としての一生を全うしながら消えていくのには、時の流れを感じさせるものがあった。この長大な水滸伝も終わりが近付き、諸行無常のはかなさを漂わせる巻である。

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