虞美人草 夏目漱石
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大学卒業のとき恩賜の銀時計を貰ったほどの秀才小野。彼の心は、傲慢で虚栄心の強い美しい女性藤尾と、古風でもの静かな恩師の娘小夜子との間で激しく揺れ動く。彼は、貧しさからぬけ出すために、いったんは小夜子との縁談を断わるが……。やがて、小野の抱いた打算は、藤尾を悲劇に導く。東京帝大講師をやめて朝日新聞に入社し、職業的作家になる道を選んだ夏目漱石の最初の作品。


☆才媛である自分に自信を持ち男心を弄ぶ女性が、男に選ばれず破滅の道を歩む。彼女藤尾が自死を選ぶのは結構衝撃的であり、考ええさせられるものがあるのだが、とにかく読むのに難渋する。漱石の職業作家としての第一作で力を入れて書かれた作なのかも知れないが、博識過ぎて文章の情報量が過多だと感じてしまった。もっとも当時の一般読者には受け入れられたのだろうから、現代に生きる私たち日本人の文学的素養が貧弱になってしまったのだろう。私の素養が特別に貧弱なわけではないと思うのだが。


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