The Voyages of Dr. Dolittle Hugh Lofting
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Doctor Dolittle and all his animal friends head for the high seas in this amazing adventure. Told by 9-and-a-half-year-old Tommy Stubbins, crewman and future naturalist, Doctor Dolittle and company survive a perilous shipwreck and land on the mysterious, floating Spidermonkey Island. There he meets the Great Glass Sea Snail who holds the key to the biggest mystery of all.


☆間違いなく児童文学の金字塔たるべき名作。動物語を解するドリトル先生の博愛主義者ぶりは児童文学にふさわしいもの。自分に害を及ぼした犯罪者さえ、厳罰を科すのでなく更生の道を示してやるのは、素晴らしい理想主義で、安心して子供に読ませることが出来ると思う。
 そんなドリトル先生の波乱万丈な航海記は文句なく面白く、大人の鑑賞にも十分耐えるもの。作者は文章表現も手を抜かず、ユーモアとペーソスがしっかり感じられる名文と思う。易しいとの評を見掛けるが、作者独特の味がある文章は慣れないと結構難解なのではなかろうか。少なくとも日本の普通の中高生には歯が立たないと思うが、どうか?
 明らかに世界中に植民地を作った大英帝国の名残で、異文化の人たちへの蔑視が見られるとして、書き換えが行われる動きがあるようだ。クモサル?島でドリトル先生が王に祭り上げられるエピソードでは、確かにそれは感じられる。が、しかし、同時にドリトル先生が現地の人に向ける温かい眼差しや献身的な態度もしっかり描かれているので、個人的にはこのまま残しておきたいと思った。何しろ火の存在すら知らない島で、料理人と来たらあらゆる食材を台無しにしてしまう名人ぞろい。だが島への滞在が長引き、他の者が全て帰還する事を熱望する中、現地の人たちを我が子のように愛するドリトル先生だけは、心配で放っておけないと帰還に消極的。周囲がお膳立てしてようやく帰ることになるのだが、関わる人も動物も愛してしまうドリトル先生の博愛主義者ぶりは感動的で、当時の社会状況の中でこれが書かれた事はむしろ大いに意義ある行為にすら思われる。

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