風雨来記2
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●みんなが、知らない、「オキナワ」へ
本格的旅行アドベンチャーとして追随を許さない境地を確立した「風雨来記」シリーズ第二弾。舞台を沖縄に移して、ふたたびバイクによる旅が始まります。深い歴史を感じさせる「神の島」でのストーリーは、あなたが決して知らない「オキナワ」の姿を知る旅になるでしょう。

●第二の舞台は「神の島」沖縄
ルポライター「相馬轍」二度目の旅は、沖縄。城(グスク)の時代から先の大戦に至るまで、数奇な運命に翻弄された「神の島」を、バイクを駆って走り回ります。一ヶ月に及ぶ取材旅行では、決して短期の滞在では訪れることのできない場所を含めた100箇所近くのポイントを訪れることができます。

●リゾートだけではない、沖縄の「顔」
二回目の旅も、「貧乏旅行」です。決してリゾートライフを楽しむものではありません。沖縄本島はもとより、石垣島まで足を伸ばし、自然・歴史・文化をふんだんに感じさせる旅を楽しみます。期間は一ヶ月間。ルポライターとして、「美ら島展」に入選するため、沖縄の本当の魅力を探し回りましょう。

●渾身のヒロインシナリオ三本
もちろん、涙なしでは読破できないヒロインシナリオも三本立てで展開。「久遠」を彷彿とさせる伝奇色あふれるシナリオを含め、バラエティに富むストーリーを用意しました。CV・・・本井えみ(芹沢暦)/儀武ゆう子(上原海琴)/沢野令果(真鶴・天継・テイラー)他。


☆応援レビューなので、ベタほめである。「風雨来記」シリーズの中で、2は前作より落ちる、とよく言われるが、なかなかどうして。個人的にはこの2こそ最高傑作としてプッシュしたい。

 前作と同じルポライター相馬轍が主人公で、発売日と同じだけ年齢を重ねている設定。従って前作との繋がりも、大ありである。前作のメインヒロイン「樹」シナリオから本作のメインヒロイン「暦」へと話が綺麗に繋がっており、二度と会えない今生の別れとなった前作と違い、本作では一応暦と旅のパートナーとして、結ばれたという結末である。ただし、失明した暦を沖縄に残し、轍は再び旅立って行く。遠く離れた旅路の中でも轍は彼女の事を思い続けながら、旅を暦の元に届ける。暦はそれを失明者のためのコンテンツとして発信していく、という話なのだが。この結末から、轍が旅先で他の女性と浮気するのは考えにくいので、帰る場所を確保しながら旅も続けると言う「風雨来記」スピリッツを体現したシナリオと言えるだろう。これははっきり言って、旅好きの男にとっては最高のシチュエーションだと思う。好きな旅を続けながら、失明してるとは言え、こんな綺麗な女性の元にいつでも帰る事が出来るのだから。

 さて、暦は美形でナイスバディーと言う完璧なルックスの持ち主。が、初対面時から主人公に複雑な感情を持っており、なかなか一筋縄では打ち解けてくれない、いわゆるツンデレ。なぜか主人公の過去の記事を熟知しているらしく、不思議な言動と相まってミステリアス。これはfogのヒット作「久遠の絆」のメインヒロイン高原万葉を彷彿とさせる。もっとも万葉は、いきなり主人公を「殺してみせる」なんて言っちゃうわけだが。

 中盤辺りから暦の抱える問題が徐々に明らかになり、それと同時に親密さが本当に少しずつ増していく。その辺の描写は実に丁寧で、伏線も張りまくり。繰り返しプレイすると、なるほどこういう意味だったのか、とハッとさせられる場面がてんこ盛りだ。私二次元は、小説の読者ならご存知のようにくどいのが大好きなので、波長が合った。「風雨来記2」自体、とにかくくどいのが特徴で、やり過ぎなくらい「沖縄」で畳み掛けて来る。一体どれだけ取材したのか、膨大な実写画像と「沖縄」に関する情報量は常軌を逸した凄まじさだと思う。北海道を薄く広く紹介して見せた前作との大きな違いで、個人的にはもちろんこちらが好み。

 中盤から終盤に向かう場面で、取材のパートナーを降りたい、と言ってくる暦と仲違い。迷路のようなフクギ林の中で迷子になった暦を探す轍も迷子になって、彼女に悪態を付いたりする。(これ、暦の抱える病気の悩みがわかっていると、轍のわがままさが際立つが)。迷いに迷ってもう駄目か、と言う轍の前に、死んだ筈の「アイツ」こと光が登場。もう私は轍から十分貰ったから、と暦を新しいパートナーにするよう導く光。ここで光が「樹」と思われる人物に言及する発言もあり、前作をプレイしていると涙もの。

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 さて、ツンデレの「デレ」の部分がやり過ぎなのも、fogではおなじみの手法。暦は人が変わったかのように轍に甘え、バカップルぶりを遺憾なく発揮してくれる。ちなみにいつもの服装からして露出の多いエロ仕様だが、暦の水着のエロさは破壊力十分。前作と違って性行為を暗示する場面がない、と言われているが、随所で見せる暦の微エロはいい、と思う。

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そして、救いようのない暦の失明と言う問題が発覚して、なぜか轍は自分の旅を伝えるため彼女と2人で無人島サバイバル生活に突入。なぜ? と言う根本的な疑問は残るのだが、失明寸前の暦と轍が悪戦苦闘して乗り切る無人島生活は感動的な場面の連続。とりわけ水不足の解消のため暦をかばった轍が水の探索に赴くも脱水症に倒れ、残された暦が彼の生命を救うため海岸に無数の穴を掘り這いずり回って水を作り出すエピソードは感涙もの。歳のせいで緩んだ私の涙腺はもう決壊しっ放しだった。無人島で失明の恐怖に怯えながら、轍と一緒ならここで死んでもいい、とつぶやく暦。モノクロに近い水彩画みたいな画像で髪を下ろした暦の美しさは神レベル。

 最後に失明した筈の暦の目に、一瞬だけ光が戻る。それはニライカナイの神様からの贈り物だったのかも知れない。こうして新しい旅のパートナーとして結ばれた轍と暦。たとえ離れていても同じ道を行ってればいつか又会う事が出来る。だから「又な」と別れて旅を続ける事が出来る。これが本作のテーマであるならば、「風雨来記」は一つのハッピーエンドを迎えたのだ。実際「風雨来記3」で、主人公は轍の記事に衝撃を受けて同じ道を志した新米ルポライターに代わっている。

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 他のヒロインシナリオも充実。石垣島の現役女子高生海琴は、幼い頃から民謡と三線の修行をして、「オバア」そして母の跡を継ぐべく育てられた女の子。天賦の才能があるものの、レールを敷かれた自分の将来への疑問から、壁にぶつかっている。轍は旅を続ける事へ疑問を持つ自分と彼女の悩みを重ね合わせ、石垣島からほとんど出た事のない海琴を沖縄本島各所の取材に連れ出していく。

 純朴な田舎の女子高生と言う設定の海琴は、風雨来記シリーズでは珍しい一般人ヒロイン。が、それだけに彼女のシナリオは生々しく、誰にも共感出来る内容だと思う。民謡と三線の伝承者、と言う事から、実際に三線の調べや民謡をモチーフにした曲が流れるが、素晴らしい出来。悩みを抱えている時と、それを克服した時と、同じ曲のバージョン違いがあるのだが、なるほど、と納得させるもので、後者は沖縄の海や山に響き渡って聞く者の心を震わせるレベルに昇華しているのがはっきりわかる。「久遠の絆」「風雨来記」と名曲を残して来た風水嵯峨さんの音楽は文句なくハイレベルだ。

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 最後に何かと話題のロリ金髪小学生(おいおい……)というぶっ飛んだ設定のヒロイン真鶴。生まれ故郷の沖縄を訪れてから消息を絶った母親を探しに、一人で沖縄に渡航して轍と出会うのだが。彼女のシナリオは、もうそのまんま「久遠の絆」なので、ああゆう伝奇ファンタジーが好きな人にはいいと思う。母親は霊能者の巫女で、悪霊と化した神の怒りを封じ込めるため、幽閉された、などと言う設定は、「久遠の絆」での名無しの巫女や、主人公の母親を想起させる。もはや想像を絶するスリリングなシナリオの末、母より強い霊能力を持つ真鶴は、沖縄を壊滅させる大津波の襲来を食い止めるのだが、年齢詐称かと思わせる色っぽい超絶美少女ぶりは反則。「5年たったら恋人になるため会いに来る」と行って別れるラスト。5年後でもまだ女子高生じゃん! だけど凄まじい金髪美女に成長してるに違いないので……轍、羨まし過ぎ(笑)

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 狭い沖縄が舞台、と言うわけで、前作のツーリングモードやキャンプの描写はなくなり、目的地を選べば自動移動で、夜は全ヒロインを含めた関係者の集まる「ガイアス」で居候生活。要するに「旅ゲー」要素が薄まり、「ギャルゲー」に近付いたわけだが、普通のギャルゲーとは全く違う、圧倒的な「沖縄」ゲーム。百聞は一見にしかず、で是非プレイして貰いたい、自力で攻略するにはハードルが高過ぎるし、ヒロインとの別れが強烈過ぎる前作より、時間を掛ければ必ずエンディングにたどり付き、再会の希望を残したヒロインとの別れを迎える本作の方が、完成度も高く万人向けの良作だと思う。最後に場所柄、戦争や米軍基地を扱った取材も多いが、まともな日本人の感覚なら気になる内容はない。旧海軍司令部などは感涙ものの取材で、別の意味で本作をプレイして良かったと思った。まあ、ネトウヨなど極端に偏った思想の人でなければ、問題ないと思う。


参考動画→沖縄へ行こう! 風雨来記2 #1

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