街道をゆく10 羽州街道、佐渡のみち  司馬遼太郎
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「羽州街道」では、家康に挑戦した上杉景勝、参謀の直江兼続ゆかりの米沢などを歩く。筆者は上杉景勝について、「謙信や直江兼続の華やかさよりも好きであるかもしれない」と書いている。「佐渡のみち」では、江戸初期の佐渡でおきた「小比叡事件」の主人公、辻藤左衛門が登場する。歴史的にはそれほど有名ではないが、いじめぬかれ、最期は名誉を賭けて戦った男への深い同情を感じさせる。



☆ほとんどなじみのない土地の紀行だったが、それだけに面白く読むことが出来たと思う。
 個人的に面白かったのは、清廉な常識人だったがために汚職塗れの同僚にうとまれ「狂人」だと幕府に密告されて乱を起こし、自害に追い込まれた佐渡の役人の話。金を産出することがわかった佐渡への「ゴールドラッシュ」と江戸幕府の天領化、そして離島故に地元官吏が腐敗する土壌があったからであるが、腐敗官吏の悪政をどう逃れるかが中国の民衆史そのもので、そのスケールの大きさと島国日本での局地的なスケールの小ささとの比較論が興味深かった。
 現代の中国でもそのまま当てはまるよな。


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