街道をゆく 13 壱岐・対馬の道 司馬遼太郎
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急死した旧い友人の故郷、対馬への旅を思い立つ著者。船酔いに耐えつつたどり着いたその対馬は壱岐とともに、古来、日本列島と朝鮮半島の中継点でありつづけた地。海峡往還のなかでこの両島を通り過ぎた、あるいは数奇にもこの地で土に還った、有名無名の人々の人生を思う。政治情勢が帰ることを拒む故国の山影を見いだすため、波涛のかなたに目を凝らす在日朝鮮人の同行者の姿も胸を打つ。



☆今住んでる地域と近いのだけど行ったこともなく、日本中どの場所よりも知識がまるでない壱岐・対馬の紀行文で、実に興味深かった。似たような島なのに、壱岐と対馬が全然違うと言う事も初めて知った。どうやら平地が多く農業に適した壱岐と、山ばかりで漁業に活路を見出すしかない対馬の違いらしいが、ホントに知らなかったので目からウロコの感じ。
 どちらも地理的に近い朝鮮と昔から大きな関係があるようだが、北海道の北方領土よりずっと以前からの繋がりなので、史跡や古資料も多いようだ。それにしても司馬遼太郎の博識ぶりには圧倒されるばかり。国民的作家と賞賛されるのも頷ける。
 本書を読んでも別に行きたいという気にはならなかったので、恐らく死ぬまでこの2島を訪れることはないだろう。そんなマイナーな場所でも行った気になれるのは、この「街道をゆく」シリーズの醍醐味かも知れない。


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