翔ぶが如く (10) 司馬遼太郎
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薩軍は各地を転戦の末、鹿児島へ帰った。城山に篭る薩兵は三百余人。包囲する七万の政府軍は九月二十四日早朝、総攻撃を開始する。西郷隆盛に続き、桐野利秋、村田新八、別府晋介ら薩軍幹部はそれぞれの生を閉じた。反乱士族を鎮圧した大久保利通もまた翌年、凶刃に斃れ、激動の時代は終熄したのだった。


☆日本人の心性に適う、言わば日本型の英雄西郷隆盛が玉砕する形で戦死。その後敵対していた大久保利通、川路利良らも相次いで倒れ、「そして誰もいなくなった」と言う感で大長編は幕引き。恐らく司馬遼太郎は、西郷隆盛を日本最後の英雄として描きたかったのではないか。近代戦に英雄は不要と言う意味で。なのにこの西南戦争における、戦略なしで突っ走り最後は玉砕して英雄的美学に殉ずる、と言う悪癖を太平洋戦争で繰り返してしまった日本の愚かさへの絶望が司馬さんの頭にはあったと思う。
 この大作で冷徹に日本型英雄西郷隆盛の影を描き切った司馬さんの労に報いるためにも、私達は「歴史を繰り返し」てはならないと思う。一人の英雄的指導者は必要ないのだ。


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