坂の上の雲(六)司馬遼太郎
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作戦の転換が功を奏して、旅順は陥落した。だが兵力の消耗は日々深刻であった。北で警鐘が鳴る。満州の野でかろうじて持ちこたえ冬ごもりしている日本軍に対し、凍てつく大地をとどろかせ、ロシアの攻勢が始まった。左翼を守備する秋山好古支隊に巨大な圧力がのしかかった。やせ細った防御陣地は蹂躙され、壊滅の危機が迫った。


☆今巻で初めて、日本の諜報活動の立役者である「スパイらしくないスパイ」明石が登場。日露戦争の影の功労者らしいが、司馬遼太郎の描き方は結構辛辣で、過度に持ち上げることは避けているように読めた。
 実際の戦闘に関わる人間も、日露とも無能ぞろいかと思われるくらい、失策で戦局が左右されたと言う描き方。有名な乃木将軍も人間的には素晴らしいものの、戦闘下手と言う描写は徹底している。「エラーした方が負ける」と言うのは戦争での一面の真実を表すものと思うが、司馬遼太郎にあえて「英雄」を描かず、戦争を決して美化しないと言う意思があったのではなかろうか。現代に直結する時代だけに、考えさせられるものがあった。


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