フランス白粉の謎 エラリー・クイーン
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五番街にある“フレンチズ・デパート”のウィンドウに展示された寝台から、女性の死体が転がり出た。被害者はデパートの取締役会長の後妻。遺体のくちびるには口紅が塗りかけで、所持していた別の口紅からは謎の白い粉が発見される…。この怪事件から唯一無二の犯人を導き出す、エラリーの名推理。巨匠クイーンの地位を不動のものとした“国名シリーズ”第二作。


☆国名シリーズ第一作と同様、この作品も余計な要素を排除し、推理の論理性のみで勝負した潔さが光る「ザ・本格ミステリ」。ショッキングな死体発見で始まるが、その後は決してドラマチックな展開ではなく、クイーン父子が捜査の過程でわかって来た事、その時点で推理した内容などが逐一明かされる親切設計。そして「読者への挑戦状」を挟み、関係者を一同に集めて謎解き、と言う本格ミステリのひな形を確立したような作品だと思った。犯人の意外性はなく、犯行に特別なトリックが使われたわけでもないが、多くの容疑者の中から真犯人を論理的に推理する過程に、素晴らしく読み応えがあった。
 クイーン警視が語ったように、論理的に推理した犯人を追い詰める物証はなく、ハッタリによって自殺に追い込むのは減点かも知れない。が、最後に犯人が判明したところで即座に終わるなど、余計な要素を極力排除し、本格ミステリのひな形を確立した事に敬意を表して満点評価としたい。


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