マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion 〔完全版〕冲方 丁
91491614


少女は戦うことを選択した―人工皮膚をまとい、高度な電子干渉能力を得て再生したパロットにとって、ボイルドが放った5人の襲撃者も敵ではなかった。ウフコックが変身した銃を手に、驚異的な空間認識力と正確無比な射撃で、次々に相手を仕留めていくバロット。しかしその表情には強大な力への陶酔があった。やがて濫用されたウフコックが彼女の手から乖離した刹那、ボイルドの圧倒的な銃撃が眼前に迫る。緊迫の第2巻。



☆ボイルドの魔手から何とか逃れたバロットが、ウフコックが誕生した研究所に匿われる前半と、ボイルドの雇い主シェルの記憶を封印したチップを入手するために乗り込んだカジノシーンの後半で、ガラリと色が変わる。前半では、バロットを追って研究所を襲撃したボイルドらを撃退するシーンが圧巻の迫力。バロットは凄まじい情報検索能力を発揮して、改めて驚異的な最終兵器ぶりを見せると同時に、自分が濫用したおかげで離れてしまい、ズタボロに破壊されたウフコックが再生されると謝って許しを請う。こうしてウフコックとの最強コンビが再結成されるのだが、バロットが教育されて行く様子が印象的だ。
 後半は打って変わり、カジノでの心理戦がひたすら描かれる。私は知的ゲームに関心があるので、とても興味深く堪能する事が出来たのだが、公平に考えると作品の中での位置付けとして比重が置かれ過ぎて、さすがに冗長ではなかろうか。しかも次にも続く終わりだし、この巻だけでの評価としては満点とはいかないと思う。


冲方 丁レビュー一覧