突如現れたご落胤・天六坊。本物や否や? そんな世間の騒ぎをよそに名物奉行・大鍋食う衛門は、業突屋のトキ婆さんが持ってきたハゼをどう食うか頭を悩ませ……。シリーズ第4弾。(解説/桂九雀)☆シリーズ第4作だが、これまでにない、スケールの大きなホラ話で、素晴らしい。私は浅学で知らなかったが、「尊号一件」と言う史実を、いかにもそれらしく取り上げ、公家が京では難しい、旨い魚料理を九衛門に依頼する、と言う大ボラを小説に仕上げたのは、天晴。「尊号一件」自体知らないので、創作なのかも知れないが、いずれにしても、アクロバティックなストーリーである。
三篇収録されているが、一つの長編としても読めそうで、完成度もなかなか。最後に勇太郎の恋愛話まで入るのはサービス満点で、エンタメ小説として頂点を極めた、とベタ褒めしておく。
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