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各紙誌で絶賛! 村上作品の原風景がここにある 村上春樹が自らのルーツを綴ったノンフィクション。中国で戦争を経験した父親の記憶を引き継いだ作家が父子の歴史と向き合う。 父の記憶、父の体験、そこから受け継いでいくもの。村上文学のルーツ。 ある夏の午後、僕は父と一緒に自転車に乗り、猫を海岸に棄てに行った。家の玄関で先回りした猫に迎えられたときは、二人で呆然とした……。 寺の次男に生まれた父は文学を愛し、家には本が溢れていた。 中国で戦争体験がある父は、毎朝小さな菩薩に向かってお経を唱えていた。 子供のころ、一緒に映画を観に行ったり、甲子園に阪神タイガースの試合を見に行ったりした。 いつからか、父との関係はすっかり疎遠になってしまった――。 村上春樹が、語られることのなかった父の経験を引き継ぎ、たどり、 自らのルーツを初めて綴った、話題の書。 イラストレーションは、台湾出身で『緑の歌―収集群風―』が話題の高妍(ガオ イェン)氏。

☆村上春樹さんが、父親の事を語っているが、私自身と重なって読めた。父とは同居していても、さほど言葉を交わす事もなく、亡くなってから、他の人から聞かされた内容が多い。戦争に行った事があるなら、なおさらで、父と息子の良くある関係なのだと思う。猫を捨てた筈のエピソードは秀逸で、木から降りられなくなった猫のエピソードと共に、本書のハイライトであった。

 父親の従軍経験は、想像以上に村上春樹さんの小説に影響を与えてるんだな、と感じた。右寄りの人が嫌う、反戦思想が彼の描く多くの作品で見られるのは、疎遠であっても、この父親がいたからこそではないだろうか。その意味で、この父親は確かに村上文学のルーツである。
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