ゴーストハント6 海からくるもの 小野不由美
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古い信仰の残る土地に暮らす呪われた一族を襲うものとは?シリーズ最高潮へ おこぶさま、十八塚……。先祖の祟りか何かの因縁か。今回のSPRへの依頼者は、老舗料亭の一族である吉見影文。その祖父が亡くなったとき、幼い姪・葉月に背中に不吉な戒名が浮かび上がった。一族にかけられた呪いの正体を探る中、ナルが何者かに憑依されてしまう。リーダー不在のSPRに最大の危機が襲う!いよいよシリーズ、クライマックスへ。


☆このシリーズ、単体でも十分面白いが、全巻を通じての謎が徐々に明らかになって来る構成が素晴らしい。今巻では最大の謎である。ナルの正体が半ば明かされるのだけど、そのための手法が凄かった。何者かが憑依して、リーダーとして頼れなくなるばかりか、ナルの危険性を知り、監視役だと言うリンさんが、陰陽師の力を駆使して、彼を封じ込めに掛かるとは。実に大胆な展開で、他のメンバーが彼の不在を補うべく活躍。これまで役立たずだった綾子が、とうとうその力を披露するのは、感慨深かった。
 作者がシリーズ全体を見越して、キャラクターを書き込んで来たおかげで、読者に愛着を感じさせるのだと思う。主要キャラは誰一人役立たずではなかった。それが嬉しく思えたのは、大きな収穫。
 ホラー小説としても、十分怖く、特に憑依されたナルが、襲い掛かって来たのには参った。抜群のストーリーテリングで、面倒な家系に関する膨大な内容を読まされても、そう苦にはならず、この陰惨な悲劇を裏付ける資料として、説得力を増していると感じた。
 読み易さが作者の力量を感じさせる、味わい深いホラー小説と評価。


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