ソロモンの偽証: 第Ⅲ部 法廷 下巻
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ひとつの嘘があった。柏木卓也の死の真相を知る者が、どうしてもつかなければならなかった嘘。最後の証人、その偽証が明らかになるとき、裁判の風景は根底から覆される――。藤野涼子が辿りついた真実。三宅樹理の叫び。法廷が告げる真犯人。作家生活25年の集大成にして、現代ミステリーの最高峰、堂々の完結。20年後の“偽証”事件を描く、書き下ろし中編「負の方程式」を収録。

☆宮部みゆきは良識派の作家だと思っている。常にハッピーエンドなわけではないが、ある程度納得の得られる終わりを描いてくれるので、安心して読む事が出来る。この大長編で言えば、絵に描いたような不良少年の被告人が、自らの行いを赤裸々に突き付けられても最後まで裁判に参加して、涙を流すのを堪えて弁護人に握手を求める場面に、素直に感動した。あるいは、自分のために証言してくれた弁護人を救うために、あえて偽証を貫き通して絶叫した告発少女にも。

 この作品、宮部みゆき作品としてはツッコミ所が多くて、褒められた出来ではないかも知れない。が、良識派らしく、キャラクターへの愛情を示すラストで感動させてくれた大長編、ファンの贔屓目であるのを承知の上で最高評価とする。
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