三幕殺人事件 アガサ・クリスティー
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引退した俳優が主催するパーティで、老牧師が不可解な死を遂げた。数カ月後、あるパーティの席上、俳優の友人の医師が同じ状況下で死亡した。俳優、美貌の娘、演劇パトロンの男らが事件に挑み、名探偵ポアロが彼らを真相へと導く。ポアロが「名助演ぶり」をみせる推理劇場。


☆この作品は凝った構成で、登場人物一覧とは別に、三幕の芝居に 見立てて、演出・演出助手として名前が並び、最後に「照明係」としてポアロの名前が出てくるのが目を引く。牧師の毒殺事件に挑むのは、通称「エッグ」と言う美少女と、彼女の両脇を固める2人の初老男。この3人の素人探偵が主役で、ポアロが脇役に回る趣向。

 いかにもクリスティー好みなお転婆娘エッグを始め、素人探偵団は関係者の聞き込みに回って奮闘するが、真犯人の見当も付かず、第二の殺人を起こしてしまい、捜査は暗礁に乗り上げる。そこでポアロが登場し、名推理で真相を暴く、という筋立てだが、ポアロ=照明係と言うのは言い得て妙だった。

 ネタバレになるので書けないが、不可解な殺人動機が最大の謎か。第2の殺人動機も「お前血迷ったのか」と言いたくなるが、第1の殺人は普通あり得ない鬼畜なもので、こんな理由で殺されては牧師も浮かばれまい。目的のためには手段を選ばない、実に卑劣な殺人動機だったと言っておく。

 本作最大の見所は、真犯人の意外性で、それを効果的に演出したクリスティーらしいミスリ-ドが光る技巧的な作品だったと思う。素人探偵団のグダグダぶりもポアロの名推理を引き立てていたと思うが、「エッグ」や真犯人の心理描写か乏しいのは少し物足りなさを感じた。演劇的描き方ではあるが、こんな卑劣な動機で殺人に手を染める人間の心理が、少しでもあれば、と欲求不満を感じたのである。


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