ホワイトラビット 伊坂幸太郎
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兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊 SIT を突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!


☆馴染みの泥棒黒澤が登場する事もあり、いかにも伊坂幸太郎らしい作品だった。ベストセラー作家の余裕と言うか、この作品はエンタメ小説ですよと宣言するような、作者の語りが入るのが楽しく、スラスラと一気に読むことが出来た。これも芸のうちだろうか。

 いろいろ複雑な事をやってるんだけど、特に頭を使わずとも、作者の巧みな語りに任せていれば安心して読み通せる感じ。熟練した作者の芸が楽しめる、安定のエンタメ作と評したいが、兎田と新妻の関係だけは少し引っかかりを感じた。エンタメ作だからこそ、2人の今後が気になるのかも知れない。


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