カラマーゾフの兄弟〈下〉ドストエフスキー

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父親殺しの嫌疑をかけられたドミートリイの裁判がはじまる。公判の進展をつうじて、ロシア社会の現実が明らかにされてゆくとともに、イワンの暗躍と、私生児スメルジャコフの登場によって、事件は意外な方向に発展し、緊迫のうちに結末を迎える。ドストエフスキーの没する直前まで書き続けられた本書は、有名な「大審問官」の章をはじめ、著者の世界観を集大成した巨編である。


☆ドストエフスキーの構想では、アリョーシャに焦点を当てた続きがあったらしい。実際そのような序文で始まっているのだが、本来中途半端な未完の形でも十二分に読み応えがある。

 下巻では何といっても、長兄ドミートリイの運命を定めた法廷ドラマが圧巻で、知力の限りを尽くした検事側と弁護側の凄まじい論争を読んでると、本当に真相がわからなくなった。そういうミステリとして読んでも超ド級のエンタメ大作と思った。

 もちろんエンタメ作品として読む必要はないのだが、さまざまな読み方を許容する懐の深さも名作の証と思う。


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