カラマーゾフの兄弟〈中〉ドストエフスキー

51HRK14YQ6L__SX328_BO1,204,203,200_



19世紀中期、価値観の変動が激しく、無神論が横行する混乱期のロシア社会の中で、アリョーシャの精神的支柱となっていたゾシマ長老が死去する。その直後、遺産相続と、共通の愛人グルーシェニカをめぐる父フョードルと長兄ドミートリイとの醜悪な争いのうちに、謎のフョードル殺害事件が発生し、ドミートリイは、父親殺しの嫌疑で尋問され、容疑者として連行される。


☆今巻の前半は末弟アリョーシャ、後半は長兄ドーミトリイと言うまるで対照的な兄弟のそれぞれが主役で、余りにも違い過ぎる2人のキャラが興味深い。個人的には親近感すら覚えてしまう、最低男ドーミトリイ(=ミーチャ)の独壇場である後半が非常に思白かったが、いずれにしても時代的にも社会背景的にも現代日本とは掛け離れているにも関わらず、執拗極まりない心理描写でガッツリ読ませる表現力は鬼気迫るものがあって圧倒された。

 時代を超越した名作であるのは間違いなく、遅ればせながらこれを読むことが出来た幸運に感謝している。読書好きなら必読。


ドストエフスキーレビュー一覧