残り全部バケーション 井坂幸太郎
51b+s1d08jL__SX346_BO1,204,203,200_

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯電話の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに――。その出会いは偶然か、必然か。裏切りと友情で結ばれる裏稼業コンビの物語。


☆いかにも井坂幸太郎らしい、一見無関係と思えるエピソードが積み重ねられ、最後に綺麗に収束する物語。本作の場合あえて書かれていない内容を読者の想像に任せるような書き方をしているが、見事な切れ味のラストには感服した。「焼き肉屋だったら承知しねえぞ。」こんな何でもないⅠ行で、これまでの読書が報われる。一つの言葉も揺るがせにしない、良質な戯曲のようにスタイリッシュな傑作だった。

井坂幸太郎レビュー一覧