カラマーゾフの兄弟(上)ドストエフスキー

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物欲の権化のような父フョードル・カラマーゾフの血を、それぞれ相異なりながらも色濃く引いた三人の兄弟。放蕩無頼な情熱漢ドミートリイ、冷徹な知性人イワン、敬虔な修道者で物語の主人公であるアリョーシャ。そして、フョードルの私生児と噂されるスメルジャコフ。これらの人物の交錯が作り出す愛憎の地獄図絵の中に、神と人間という根本問題を据え置いた世界文学屈指の名作。


☆名前だけは知っていたロシアの文豪ドストエフスキーに初挑戦。文庫本3分冊のボリュームにも圧倒されたが、形振り構わぬ圧倒的な熱量の内容に衝撃を受けた。起こっている出来事はむしろ卑俗で、ドタバタ喜劇的ですらあるのだが、時折挿入される登場人物の、何かに憑かれたかのような長台詞が凄まじい。

 今巻ではイワンの大審問。こういう長台詞の時、現代の作家のようにリーダビリティへの配慮など皆無だろう。しかし主人公アリョーシャが中学生の投石で負傷した辺りから、全く目が離せない高密度の文章に畳み掛けられて文句なしに面白かった。

 この後どんどん面白くなるらしいが、どんな凄い読書体験が出来る事か、身震いしている。


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